カウンセラーとして働いていると「話すだけで何か変わるの」「話すを聞くだけで何もしてくれないじゃない」という言葉とはよく出会います。
確かに、具体的な知識や助言を求めて来た相手に対して、その人の話を聴くだけでニーズに応えないと不信感を抱かせてしまいますよね。
ただ、私は誰かに話をするってことだけで、人は変われると思っています。
その理由は、以下の3つです。
①事実を見つめられるから
カウンセラーは、あなたの話を「客観的事実」と「主観的な解釈」とを区別して聞きます。
「クラスの人と上手くいかなくて辛いんです」という話を、
どういう場面で何があったのかという事実と、それに対して何を感じて何を考えたのかという部分に区別します。
「みんなでわいわい話している中に私が入っていったら、みんなが静かになった」
という事実と「私がみんなに嫌われているからそういうことが起こっている」と解釈して「辛い気持ちになった」という考えと分けます。
それによって、その解釈が本当にあっているか検討を一緒にすることができます。
一人だけで考えていると、自分で解釈したことと意識せず「上手くいっていない」というのが真実で、その解釈で更に傷ついてしまいます。
「私はいつも人間関係が上手くいかない」「私が空気が読めないのがいけないんだ」
どんどんその解釈をスタートに、自分をどんどん傷つけてしまっていきます。
一人でぐるぐる考えていると思ってしまうこのパターンを、
誰かと一緒に「客観的事実」を抑えた上で、「主観的解釈」でしかないことを理解すること、そこを検討すること。
それが、「話を整理すること」なのです。
②「よしよし」してもらえるから
自分で自分に優しくするって案外難しいことです
自分に厳しいことって、心が健康なときはがんばる原動力になったりしますが、
疲れているときは更に自分を追い詰めてしまいます。
追い詰められた自分を、更に責めるとすっかりエネルギーがなくなってしまいます。
そういうときに、人に話して「それは傷ついて当然だよ」「大変だったんだね」
子供が転んだときに、お母さんの元へ行って抱きしめてもらったりよしよししてもらうことで、痛みがまぎれる様に。
傷ついたことを大変だったことを受け容れてもらって「よしよし」してもらう。
それだけでエネルギーが回復することって往々にしてあるものです。
③ショックな出来事の情動処理が起こるから
いやな出来事って、思い出したくもないし、思い出すたびにいやな気持ちになります。
だけど、最初に経験したときよりそれを後から思い出すときのほうが。
そのときより、3回目に思い出すときのほうが、
それに伴って生じるいやな気持ちは小さくなっていきませんか。
出来事を繰り返す話すことで、そのいやな出来事とちゃんと距離をとって、その出来事は過去の出来事で今起こっているものじゃないんだ、もう終わったことなんだと自分に教えてあげることが出来るのです。
無理してする作業ではありませんが、人に話すことって、そういう効果もあるのです。