- 作者: 中村ユキ
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2008/11/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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コミックエッセイの良いところは、読みやすく、気軽な気持ちで読めること。
啓蒙や、家族の理解のために使えると思い、読みました。
読み終わって思ったこと、それは、娘であるユキさん、よくこんなに頑張った…という感慨深さでした。
母子二人で母を支える生活、不安定で過度な責任が娘さんの肩に乗ります。
なぜこんなにユキさんが頑張れたのか、そちらにすごく関心が湧きました。
良かったのはおそらく、お母さんの発症が5歳位だったこと。
人は1歳半位までの期間に、人との関わりのもとである"愛着形成"が行われ、この世界は基本的に安心しているものであるという"基本的信頼関係"が培われます
その時期はお母さんが発症していなかったこと、それが大切な要因としてあったのかな。
ユキさんの回想でも、お母さんから愛されているというメッセージ、可愛がってもらったという記憶が確かにあります。
それが、ユキさんを支え続けてきたのは大きいでしょう。
また、ユキさんの問題解決能力の高さも驚きました。
サラ金を使ったお母さんに対して、法律について自分で本を読み解き、消費者センターとやり取りしている描写にびっくり。
あと、17歳から家事と金銭管理を自分で請け負い、その理由を"お母さんは正社員で忙しいから"と、お母さんが受け入れやすいような表現で伝えるのも上手です。
その力が功を奏して、具体的な生活上のストレスは減っていたことが考えられます。
ただ、このユキさんの力が仇になり、お母さんがこんなに大変な状況というのを隠し通すことができてしまったとも同時に言えるかもしれません。
子供一人が親御さんを支えるというのは、大変なことです。
この漫画では、お母さんが地域と繋がるまでお母さんについて全てユキさんが考えていました。
でも、本来は家族だけで抱えず、地域の専門家や福祉の力を借りて広く長く本人を支えていくものなのです。
それが出来なかった理由として、ユキさんが人に助けを求めるという力が足りなかったことが考えられます。
人に助けを求めるためには、相手との信頼関係を築くことが大切です。
デイケアの保健師さんがその相手になりそうでしたが、度重なる異動で、信頼関係が出来かけては崩れるという喪失体験をしてしまいました。
それによって、ますます人に相談しようというモチベーションが下がってしまったように見えました。
この本は、お母さんが障害者年金を受給し経済的に安定すること、また、地域とつながり、お母さんの支援の輪が広がった過程が描かれています。
ユキさんに、結婚によってお母さんについて一人で考えずに済むようになったこと、あとはお母さんを心配せずに済む時間ができることで、自分自身の課題に向き合うことが出来たことが、最後に描かれており心から安心しました。
読んで思ったこと。
・家族だけで抱えず、外部の人や機関を入れることの大切さ
・家族が当事者のことばかり考えず、自分の人生を歩むことができるという視点のすごく重要