木馬の時間

ブログタイトルは俵万智さんの大好きな歌から。ゆっくり、前に後ろに。

小泉放談

小泉放談

小泉今日子さんが好き。
あまちゃんのお母さん役で、肩の力抜けてる演技が好きになった。
歳を重ねてるのに、とってもチャーミングでゴージャスで強くしなやかな女性。

小泉さんの文章も、好きだ。
いろいろ経験したことがあるのに、重くない。
たまに、いろんな辛いことがあったんだろうなって、背中に重い荷物をしょってる人がいる。
何かの節にその荷物が顔を出す。
小泉さんもきっといろいろ経験したでしょうが、それがしなやかに過ぎ去ってる感じ。
本人は身軽。

名だたる著名人が、みんな小泉さんに一目置いて、今後に期待している感じが見えて面白かったです。
50歳を迎える小泉さんが、50歳を超えている先輩方と語る本。

心に残った点は、浅田美代子さんとの対談の中で、浅田美代子さんの犬に対する思いを小泉さんが語ってるところ。

美代子さんの犬たちもお母さんが亡くなられたあとの美代子さんに秩序を作ってくれたんですよね。朝起きて、昼食べて、1日何度かは外に出てね!って

人に秩序を作るって大事。
仕事や学校なども人に自然に秩序をプレゼントしてくれますね。
自分一人でなんでもしていいという状況だと無秩序だと、堕落してしまいます。
いつかは悲しいお別れも避けられないですし、そうなった時に
それでも、歯を食いしばってしっかり自分の生活を営んでいくということは大事なこと。
そして、朝起きて外に出る機会をくれるのは、守るべき存在なんだろうな。
引きこもりの子達、不登校の子たち、すっごくくたくたでもうどうしようもない時は、無秩序の中で休むを貪るのが大事。
それが終わったあとは、生活の秩序を立て直していく段階なのだろうな…と思った。
父が仕事退職したら、犬を飼おうと思っているんです。
その思いが強まりました。

死に関連して、もう一つ。
上野千鶴子さんとの話の中の、上野さんの言葉。

親を見送るという大仕事。学ぶ機会「人間、こうやって衰えて、死んでいくのか」っていうことをね。はっきり言って、老いは美しくないです。無様だし。誰もカッコよく、コロッとなんか死ねない。
「それでもOKなんだ」って思えたらいいんですよ。歳をとるってそういうことなんだと。

つい最近もじじばばの役割は老いて死んでいく姿を見せること…という文章を目にしたことがあったんです。
美しくありたい、正気でありたい、迷惑かけずにコロリといきたい。
誰しもそう思うけど、それでもそうじゃなくてもいいんだと、死とは老いとはそういうものなんだと。
まだ20代終わりに引っかかっている自分としては、認めがたいし、そこまでしっくりはこないけれど、きっとこれは真理なんだろうなぁと心に残りました。

50代は、死についても考えると同時に、次世代に関しても思いをはせるようになるのですね。

この世界であとからくる人たちが歩きやすいように、少しずつ草を刈ったり、明かりをつけたりする作業を、この先何十年か、やっていきたいと思ってます。

小泉さんはこう語ります。
頭をよぎるのは、能年玲奈ちゃん、のんちゃんのこと。
彼女がいろんなしがらみの中でもがいている姿、どううつっていたのでしょうか。
きっと能年玲奈ちゃんにかつての自分の片鱗を見て、手を差し伸べてあげたいと思う方々がたくさんいて、小泉さんもその一人だったんでしょうね。

生き方も、50代オーバーの先輩方、こちらもうなってしまうような発想。

平松 「これはやらない」というのとを決めるって、大事な選び方。やらない、選ばないというのも実はちゃんと選んでいるし、大変な決意。

今後のキャリア、今後の人生、どう生きていくか明確な道筋はありません。
出たとこ勝負だなぁと、思うことも。
それでも、これをやる!じゃなくて、これはやらない!という、生きる指針を作っていけたらいいな。
確かに、相談業務でも、やりたいことは出てこなくてもやりたくないことは出てくる子が多いんです。
どちらも自分の意思で選んでるって意味では一緒ですね。
すとん、と何かが腑に落ちた感じ。

平松 何か起こるたびにしんどい思いわやしたりもしますけど、そういう時には「いや、でも」と思い直すんです。「起こったことは必然だったんだ。だから、すべていいことだ」って。そこは愚直に肯定する。

小泉 人間として最低限、「これはしない」「あれはしない」ということを決めておくと、いいですよね。

愚直に肯定するっていい表現。好き。
そうなんです、全てよかったんです。
愚直に肯定します。
後悔したこともあるけど、でも、これで良かったんです。

そして、美輪大先生の男性を斬るこのセリフ。
見事です。鮮やか!
文化をたくさん食べよう。

美輪 日本は男性の文化がない国。男性はまったく文化を楽しまない。音楽会、舞台、歌舞伎、見にいくのは女性ばかり。
精神的に栄養失調
文化、美術、文学、音楽などをたくさん食べて、それが身になっている人からは、光が滲み出てくるもの。