私たちは子どもに何ができるのか
私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む
- 作者: ポール・タフ,駒崎弘樹,高山真由美
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2017/09/06
- メディア: 単行本
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子どもの教育についての本を読むとよく出てくる"非認知能力"。
幼児教育において、認知能力(IQで測れるようないわゆる読み書き算盤)の力をつけても、その差は就学後にすぐに埋まってしまうらしいです。
就学前にひらがな習ったって、入学後にすぐ追いつかれるんですね。
でも、非認知能力は就学前に身につけることでその後の学歴、年収、認知能力に大きなプラスの影響をもたらすことがわかったんです。
ここで思うことでしょう、じゃぁ非認知能力とは何か。どうやって身につけるか。
わたしも思いました、どの本にもぼんやりとしか書いてないから気になりました。
そこでこの本を手に取ったのです。
非認知能力は、やり遂げる力やモチベーション、自制心など複数の要素から構成されています。
それらの力って、直接的に伸ばそうと思って伸ばせるものではないんです。
本の例えでいうと、二次関数を扱わないで二次関数を学ばせることはできないけれど、非認知能力は直接的に扱うのではなく、何かの経験を経て子どもたちが学んでいくもの。
つまり、学ばせる環境を整えるものなのです。
その環境とは。
この本は一人一人の子へのアプローチの仕方を描いたというよりは、社会全体として子どもの非認知能力を高めていくためにどうすれば良いかという視点で描いていた本です。
未就学の子供には、親にアプローチ、就学後は学校にアプローチしていました。
まず親へのアプローチ。
親の大切な役割を二つ挙げています。
一つ目は、愛着形成とも関係してあるのですが、ラリーの話です。
子どもの行動をキャッチして、言動にて反応してあげること。
子が泣く→抱き上げる"悲しいのね"
子が笑う→微笑みかける"嬉しいの"
子が一点を凝視→"わんわんいたねぇ"
子が指差し→おもちゃ取る"おもちゃ取って欲しいのかな"
もちろん、子の意図するところを汲み取るのはなかなか難しいです。
これを行うためには子供を観察し、それに反応する、"応答性"が大事です。
本の中には、母親自身が貧困などストレスが多い環境にいると、この働きかけを子にするだけのエネルギーがなく、軽度のネグレクト(テレビを何時間も見せっぱなし、子が泣いても反応しない)を示してしまう恐れが あると述べていました。
ただし、この応答性とは24時間365日正確にやらなければいけないわけではありません。
子の意図することを間違って解釈することも普通にあると思います。
時にそれが子の発達に結びつくこともあります。
精神医学者のウィコットもほどほどの欲求不満が人を成長させると述べています。
また、家事をやっていて反応できないことは日常生活ありますが、それも自分一人で遊ぶ力を培うため、大事なことだと説明していました。
もう一つの親の大切な役割は、ネガティブな情動を落ち着かせることです。
子が泣いたり怒ったりした時に、それを受け止めて、沈静化させる役割です。
泣く後、抱きしめたり頭を撫でたりなどのスキンシップをとったり、悲しかったね、嫌だったねと感情にラベリングしてあげること。
子が落ち着くまで寄り添ってあげること。
いずれ自分で感情コントロールするために、乳幼児の時は親が手伝ってあげることが必要です。
これら二つのことをやっていくことで、子どもの世界が秩序立って安定したものとなります。
子どもは世界に対する信頼感を持つことができ、自らの興味関心に基づき探求して能力を伸ばしていくことができます。
その信頼感は就学後も教師に向けられ、よりよい学校生活を送ることができるのです。
後半では学校教育でできることについてさまざまなデータを用いて説明しています。
目の前の我が子だけではなく、いろんな環境に生まれ育つ子も含め、子どもたちの今後について考えるきっかけになった良書でした。