京セラの設立者である稲盛和夫氏の考え方を、項立ててわかりやすく書いている本。
大企業で人事をしている知り合いから薦められました。
普段このようなビジネスマン向けの自己啓発本は読まないので、新鮮でした。
仕事の成功を考え方×熱意×能力の方程式で捉えており、能力は元から決まっているが、熱意は自分の意識次第、考え方は正しくないとマイナスにすらなりうると説いています。
そして、正しい考え方とは。
世のため人のため、利他的な善たる信念を持ち、謙虚な姿勢でもって一生懸命頑張り続けるという考え方とのことでした。
この本を読むだろう、意識高いビジネスパーソンにとっては、共感しうる考え方なのでしょうか。
この本に共感できる人々が、これまでの日本を支えてきたような気がします。
稲盛氏はこんなにも素晴らしい実績をお持ちながらも、謙虚な姿勢を持ち続けておられるのですね。
地方出身であることや受験や就活で落ちた挫折経験が何度も何度も出てきますから、それが稲盛氏にとってかなり大きな出来事であることが伺えます。コンプレックスだったのかな。
受験で落ちた能力の低い自分も、考え方と熱意で持って成功することができた…というストーリーを持つからこそ、周りの人も考え方と熱意をもって努力することで成功するという主張に行きつくのでしょう。
ただ、そもそも利他的な動機は、衣食住足りて精神的に安定した状態じゃないと生まれにくいものだろうなーとか。
熱意と考え方は自分次第って文脈に、違和感を感じる部分は多くありました。
また、正しさとか、成功とかは、絶対的なものではなく相対的なものであるという立場からしてみたら、全ての人に通ずるものがあることを前提に書いている部分はちょっと違うように思います。
そこまで仕事に打ち込むことで、家族に寂しい思いをさせてしまい、子どもに、"なんてひどい親だと思った"と思わせたエピソードも出てきました。
稲盛氏は、家族を大事にすることを小さな愛とし、それより社会で成功すること、もっとたくさんの人を大事にすることを大きな愛とし、より重要な価値観としているところはもやりますね。
ただ、家族が崩壊しなかったから自分の考え方は間違ってなかったんだと、自分の非を認めていませんが。
マザーテレサは、世界平和のためにどうすればいいですかという問いに対して、家に帰って家族を大切にしてくださいと述べたといいます。
稲盛氏は、家族を同志と捉え、信念を持つ自分を理解してくれるだろうと思い、犠牲にしておりました。
以上、今はワークライフバランスを重んじられる社会で、男性も育休を取る流れになっています。また、社会的な成功を善と思う人ばかりでなく、もっと生きる意味は多様化しているでしょう。
ということで、批判的に読んだ本でした。
こういう考え方をしている人の家族が、不登校になった場合、この人はどんな風に捉えるんだろうと考えると、恐ろしくなったのでした。